論 考

暗愚ウイルス

 宏池会といえば自民党派閥のなかではリベラルで、理論を大切にするとか、国民に対して誠実な印象があったが、どうもさっこん違和感が強い。

 岸田氏に、リベラル・理論・誠実の3本柱が見えないからだ。それを強く印象づけたのは大平正芳氏(在1978~1980)であった。寡黙だが、議論で的を外すようなことはなかったし、ユーモアとウイットを備えていた。

 宏池会出身の首相でボロクソの評価をうけたのが、鈴木善幸氏(在1980~1982)であった。大平氏が急死して、まさかの登板、Zenko Who? で就任し、やがて奉られた尊称! は、暗愚の宰相である。

 先日、どこかの週刊誌の宣伝を見ていたら、岸田氏に暗愚の宰相という見出しが付けられていた。なるほど、宏池会も功もあれば「痴」もあろう。

 岸田氏の聞く耳論は最初から厚化粧の看板だと見ていたから格別期待していなかった。なんとなれば、聞く耳とは、リベラル、誠実はもちろんだが、それ以上に相当な理論家であり、彼我の見解の違いをすみやかに理解し、整理して双方理解の広場をつくられる知と度量が必要である。

 岸田氏に限らず、そんな政治家がひょいちょい登場するわけがない。

 いま願うのは、政治家全体が暗愚だと言われないことだ。要注意、コロナと同じで暗愚ウイルスは感染しやすい。

 そういえば、東京の1週間当たり感染数がまたまた上昇している。みなさま、マスクつけるのつけないの論争もよろしいが、くれぐれもご用心を。