論 考

欲望肥大化の世界

 スイスの象徴の1つでもあるクレディスイス銀行を、国の後押しでUBSが買収する。先週末2日間の動きは実に劇的なニュースだった。

 クレディスイス銀行は資本もしっかりしているし、倒産の心配などないというのが常識だった。シリコンバレー銀行倒産に端を発した今回の騒動は、オンラインの動きもさることながら、なんといっても世界の金融が賭博化していることを改めて照射したのではなかろうか。

 ストレンジ(1923~1998)が世界金融の実態を著作『カジノ資本主義』で鋭く告発追及したのが1986年だ。――金融カジノの元締めが大銀行と大ブローカーである――という痛烈な批判は忘れられない。

 それから37年、その間たびたび金融危機が発生したが、金融の肥大化はなんとも改善できない。グリーンスパンが「100年に1度」と語ったのも、いまにして思えば事態を正確に表現していなかった。

 目下、金融界は疑心暗鬼だというが、カジノ化しているのだから疑心暗鬼もないものだ。

 世界をかき回しているのは、権力とカネだ。その根源は欲望なんだろう。