論 考

植田氏発言の含蓄

 日銀総裁候補の植田氏の発言は含蓄がある。

 野党には、もう少し突っ込んだ発言がほしい向きもあるが、わたしは野党が注文している内容に十分答えていると思う。

 まず黒田日銀の業績(!)である、YCCの副作用を指摘し、EFTのリスクを指摘し、その処置をどうするか、問題意識を述べた。副作用を軽減しつつ、金融緩和を継続するのが仕事だと結論する。

 野党は黒田日銀の総括を明確にしてほしいのだが、それに対して、植田氏の問題意識は概ね応じている。

 仮にド派手にばっちり総括をやると応ずれば、市場の混乱は避けられない。市場の連中は自分たちの都合しか念頭にないからだ。

 歴史は原因と結果の連続である。いま、悪しき結果が出ていても、次の対策は現状から始めるしかない。仮に全面的に総括して悪しき原因を引っぱり出したとしても、それを白紙還元できない。

 植田氏は歴史の厄介さを認識しているように思える。