論 考

日本が変わられないわけ

 黒田氏の日銀総裁期間は2期10年で、この3月に終わる。かつてのFRBグリーンスパン氏のように名議長として長期化したわけではない。

 経済活動の結果としてのデフレを、原因と置き換えて、デフレを脱却すれば景気がよくなるという、とても理屈にならない理屈で、異次元緩和をやった。

 無茶をやって、それが長引けば、正常軌道に戻すのは容易でない。しかも1期目が終わるときは安倍内閣が続いており、黒田打ち出の小槌を手放さない。黒田総裁2期目は時間がすぎるにしたがって十重二十重の自縄自縛状態だ。

 現在、次期総裁候補に3人ばかり名前が挙がっているが、どなたも固辞の意向らしい。当たり前だろう。いかに後始末に献身するつもりでも、1つの慣性が続いており、つつけば、なにが起こるかわからない面が多い。

 もちろん、この10年間の検証総括がきちんと確立するならば、全体的合意のもとで新しい方針に踏み出せるが、大々的な検証総括ができない。

 かくして、安倍・黒田のめちゃくちゃ路線が公式に批判されない。こんなことばかり続いているから、わが国は新しく変わられない。

 日銀人事もまた日本が直面する厄介の象徴である。