論 考

コインの表と裏

 本日は自由と平和を愛し、文化を進める文化の日であるが、すっきりしない。1927年から48年までは明治節で、明治天皇の誕生日の記念日だった。

 敗戦で、平和文化国家として再出発したが、仏文学者渡辺一夫氏は、敗戦で一夜明ければ、軍国日本が文化国家という、形だけの変身をしたと終生心配されていた。同感だ。

 くわえて目下の内外情勢において、自由と平和の文化を進めるような気風はまるで見当たらない。

 渡辺先生は、明治時代に引きずり始めた足をまだ引きずり続け、なにかの方向に雪崩落ちないと、どうにもならぬような気がしてならぬ、とため息をもらされた。これは1972年、半世紀前である。

 当時の筆者はのほほんとしていて、まさか、こんにちのような事態に至るとはまったく考えなかった。甘すぎた。

 明治節と文化の日は全然異なる設定だが、なにやらコインの表と裏のような気がする。