論 考

ブラジルの政権移行

 10月30日のブラジル大統領選挙決選投票で、ルラ氏がボルソナロ大統領を僅差で破って再選された。来年1月1日就任予定である。

 得票率でルラ氏は50.83%、ボルソナロ氏49.17%。経済混乱、物価上昇が10%超、乱脈政治に批判が集中したと見られる。

 しかし、ボルソナロ氏は選挙結果について沈黙しており、不穏な雰囲気であった。なにしろ今年1月から6月まで半年に政治家45人が殺害されている。ボルソナロ氏が銃所持を緩め、露骨に、対立する党派の議員を撃てとブツような事情だから、円滑に政権交代ができるかどうか。懸念された。

 11月1日、ボルソナロ氏が演説し、憲法を順守すると語り、側近が政権移行プロセスを認めたと補足したので、ひとまず危惧されたボルソナロ派の暴発は避けられたようだが、依然として万事大丈夫とは見られない。

 ルラ氏は、平和・民主主義・尊厳ある社会を訴えた。新政権が発足しても、経済問題をはじめ難問山積だ。

 尻ぬぐいせねばならない政治をやってしまっても、政治家自身は辞めれば終わりだ。これは、日本でもまったく同じ。目下、岸田氏の無能力ぶりが批判されているが、換言すれば、安倍政治の総括ができない(しない)からである。

 言いっ放し、やりっ放しの体質が、ポピュリズム・無責任政治の元凶だ。ブラジルもおおいに気がかりだが、他所事ではない。