論 考

砲艦外交の挑発

 昨年3月、アメリカ上院で、デービッドソン海軍大将が、中国が2026年までに台湾へ軍事侵攻すると証言して物議をかもした。

 これは確たる証拠に基づくものではなく、アメリカ軍の軍事的予測で、あえて理屈づければ、台湾侵攻をする場合の中国の軍事力体制構築が2026年ごろになるというものだった。

 この19日にシンクタンクで、海軍作戦部長のギルディ大将が、軍事侵攻は23、24年の可能性すらあると発言した。これは、デービッドソン発言を基に組み立てたと思われるが、まさに確たる根拠はない。根拠なきことを根拠として話を拡大するわけだ。

 砲艦外交を柱とするアメリカの軍隊がつねに最悪に備えているという理屈は成り立つが、議会でチャラチャラおしゃべりして、報道される。宣伝戦というわけだが、人々の気持ちを誘導する危険が大きい。

 中国からすれば、いや客観的にも立派な挑発行為である。

 組織というものは予算獲得たのために、自分たちの存在理由を大きく宣伝する。そういう理屈はもちろん理解しているが、こうした挑発の積み重ねが、世界を割っていく。まことに陰湿にして危険である。