論 考

トラス首相の辞任

 イギリスのトラス首相が就任44日で辞任表明。28日に保守党は党首選出の予定だ。

 トラスの低税率・高成長というビジョンは、党首選を争ったスナク氏から、インフレ下でそのような政策を取れば金利が上昇すると批判されていた。その通りになったわけだ。

 ただし、問題がイギリスの低生産性にあるというトラス氏の指摘は外れてはいない。つまり、理屈をいえば段取りを誤った。とくに市場の理解が得れられなかった。

 イギリスは6年間で5人目の首相を選ぶことになる。大混乱だ。EU離脱のブレグジットをおこなったのも、低生産性が背景にある。

 筋からいけば、解散・総選挙が妥当だが、いま、選挙をやれば保守党の下野は確実である。保守党としてはなんとしても党内選挙で乗り切りたいのだが、いわゆる「玉」がいない。それも6年前から続いている。

 保守党は派閥だらけで、まとまりを欠いている。たった1つの強みは現在下院650人中、356人を擁していることである。果たして、これだけで乗り切られるか。