論 考

深刻な時代

 11月8日アメリカ中間選挙は、反トランプが選挙戦の軸になっている。予想通り、もう1つ人気が上がらないバイデン陣営が、もっとも打ち出しやすい戦略である。

 トランプ陣営は、いまも大統領選挙が不正だったというキャンペーンを続けている。

 つまりは、ネガティブ・キャンペーンの応酬で、いずれが勝っても後味の悪さが残る。後味だけではなく、さらに米国内が分断と対立を激化させる危惧が大きい。これが、なんとも深刻きわまりない。

 既成政治家に対する不満を攻撃して、先の大統領選挙に勝利したトランプは、典型的なポピュリズムの扇動政治家である。(しかも、世界の政治は全体にポピュリズム化しているとみたほうが妥当だ)

 トランプ政権の4年間の成果はほとんどなかった。目立ったのは、権力掌握をさらに強化する姿勢であり、人々が、その危険性を注視すれば、トランプの徒党となっている共和党よりも、民主党を選択するだろう。しかし、民主主義のあり方よりも、いかに不平不満を組織化するかに長けているトランプ陣営の戦略は、人々の冷静な判断を揺さぶっている。

 民主主義に教科書はない。

 ある時期、素晴らしい民主政治が展開されたとしても、うたかたである。光は向こうからやってこない。1人ひとりが自分に問いかけること。社会は、そうした真摯な人々によって信頼を形作っているということだと思う。