論 考

日米同盟原理主義の愚

 なんとしても、米中覇権争いは世界にとって最悪の材料だ。日本が取るべき道は、覇権争いの片棒担ぐことではなく、覇権争いをなくするための努力でありたい。このくらいは、政治家であればわかるだろう。

 今朝の毎日新聞社説は、「アジア安定と日本 『米中』に埋没せぬ戦略を」と題して、ASEANが米中対立に巻き込まれないように外交戦略を立てていることを指摘する。

 二者択一でいけば、米中覇権争いを拡大する愚に加担するのだから、ASEANの見識は日和見ではなく、しっかり、独立した考え方である。

 タカ派と見られていた福田赳夫首相(当時)が1977年に、東南アジア外交原則を打ち出した。軍事大国にならない・東南アジアの国々と対等協力関係を築くと発表した。いわゆる全方位外交の文脈である。

 韓国尹大統領は、先日のペロシ訪韓の際、休暇を理由に直接面会しなかったが、その背景には、韓国の独立した考えがある。要するに、韓米同盟であっても、韓中友好であっても、いずれかを原則として動きが取れなくなるような始末にはしたくない。ペロシ氏の無謀な行動に対してケジメをつけた。

 この点、わが国は日米同盟絶対で、すでに日本の独自外交は存在しない。これが、独立した国の方針として正しいわけがない。

 福田氏の時代から、日本がどのくらい軟弱になったか、歴史というものは時間が過ぎると真実を浮かび上がらせる。