論 考

とにかく、冷静に

 安倍氏銃撃事件は、嫌な事件だ。目下、犯人は政治的信条に対する恨みではないと語ったそうだが、殺したくなるほどの怨恨なのか。

 しかも、家族を崩壊させた宗教団体のトップが怨恨の対象だというから、うっぷん晴らしすればいいというだけだったみたいである。

 与野党問わず、メディアも挙って、民主主義の破壊を許さないというトーンだが、狭い意味の民主主義というより、30有余年にわたって閉塞感が続く社会や、力でゴリ押しした与党の下での不毛の政治的雰囲気が、間接的ではあっても、おおいに関係しているのだろう。もちろん、ウクライナ戦争の人命軽視も無視できない影を落としていると推測する。

 形式的に民主主義の崩壊を大声疾呼するのは、中身空疎の騒動になりかねない。事態を冷静に考えねばならない。とくに、弔問記事で、安倍氏をヒーロー扱いするのは、この間の政治の中身を書き換える懸念がある。