論 考

NATOは所詮軍隊である

 今朝の社説は、朝日「NATOと日本 『安定』に資する連携を」、読売「NATO拡大 露が招いた安保体制の転換」である。

 NATOがロシアを最大かつ直接の脅威と位置付けたのは、現状を追認したものである。ただし、中国を欧米の価値観や安全保障に挑んでいると踏み込んだのは拙速で感心できないだけでなく、危険である。

 そもそも目下NATOが緊急に決着させねばならないのはウクライナ戦争である。ロシアの侵略はけしからんが、なぜ、国連加盟国が挙ってロシアに戦争を止めよという見解で一致できないのか。事態について静観、模様眺めしている国々は、アメリカを筆頭として、いわゆる西側の価値観なるものに全面的に心を許していない。ご都合主義だという批判が強い。

 その事態において、ウクライナ戦争を、ウクライナを除く各国が本格的に参戦せず決着させるためには、中国をはじめ、ロシアを全面的に批判していない国々と共に行動しなければならない。

 それをうっちゃらかして、さらに一歩踏み込んで、中ロ一体の扱いをすれば、ウクライナ戦争の決着どころか、さらに大きな戦争に火がつく危険性がある。

 両社説共に、NATOが日本をアジアのパートナーとして目を向けたと歓迎のトーンであるが、軍事同盟であるNATOの外交力がたいした効果を発揮していないのは、ここまでの推移で十分にわかる。軍事同盟の拡大が平和につながると本気で考えているのであれば、朝日・読売共に猛暑ボケ、いや、ジャーナリズムとしての見識が低すぎる。

 朝日は、「安定に資する連携を」とお題目でお茶を濁しているが、読者を愚弄している。それを言うなら、軍事同盟拡大を議論するより、ウクライナ戦争を止めさせるための対話を直ちに開始せよというのが筋道だろう。朝日の優等生的、欺瞞的表現は、明確に自民党の提灯持ちする読売よりも悪質だ。