論 考

箴言の西東

 ラ・ロシュフーコー(1613~1680)の『箴言』に――人は好んで他人のことを忖度するが、自分が忖度されるのは好まない――とある。

 この場合の忖度は、推察、心中を推し量る意味ではあるが、どちらかというと「覗く」「勘繰る」という意味が強い。

 他方、しばらく流行った現代日本の忖度は、心持を推し量って、御意に適うようにするという意味である。

 最初に忖度が登場したとき、欧米紙は翻訳に苦労したらしいが、なるほどねえ。たしかに意味が違う。

 また――真の雄弁とは語るべき一切を語り、語るべきことのみを語る――というのもある。

 これ、わが政界においては――真の雄弁とは騙るべき一切を語り、騙るべきことのみを語る――という次第になる。