論 考

大きな声は破滅への道案内

 マクロン(仏)・ショルツ(独)・ドラギ(伊)・ヨハニス(羅)の4首脳がキーウでゼレンスキー氏と会談した。公表されている内容は、さらに結束を確認して戦争に力を注ぐ構えだ。

 ウクライナ軍総司令官によれば、戦争の前線は2,450kmにわたり、1,105kmにおよんでロシア軍との戦争が頻発しているという。砲門で、ロシアはウクライナの10倍だから、重火器、大砲、対空防衛システムを切望している。

 はっきりしているのは、戦局を転換させる戦略・戦術を打ち出す政治家がどこにも見当たらない。

 この事態では、どうしても声の大きい勢力が世論を形勢する。もちろん、大きい声は「いけ」というのであって、冷静・慎重に問題解決をめざそうという小さな声は利敵行為として叩かれる。

 理論の出番がない。要は、武器と兵士の消耗戦である。ロシア兵の士気疎漏や、甚大な被害が報道されるが、ウクライナも同様である。前線に立つ兵士は、人間としての感情を押し出したのでは戦えないから、それぞれの大義に依拠して、破壊と殺戮に励む。憎しみの拡大再生産が続く。

 マクロン氏が、ロシアに勝たせないと主張しつつ、ウクライナに勝たせると主張しないのは、派手ではないが、理性と理論の声だ。

 このままでは、戦いすんで日が暮れて、墓場の平和が訪れるしかない。