論 考

ゴミ箱からダイヤを探せ

 昨日通常国会が閉会した。閉会についての今朝の社説は、朝日「言論の府 再生の道は遠く」、読売「課題を掘り下げたとは言えぬ」、毎日「ますます議論がかすんだ」と並んだ。61本の法案が成立したが、国会の評価はきっちり低い。

 ウクライナ問題、物価問題、経済問題、コロナ問題など、問題は山ほどあるが、いわば政府与党の場当たり的対処策について、野党が同じ次元で論ずるのだから内容が掘り下がるわけがない。「なにを」「なぜ」という視点を欠いた論議では、読売がいうように、掘り下げられないのが当たり前だ。

 まことに不細工なのは、略称文通費という、思春期の若者(ただし昔の)が胸キュンとなる問題すら先送りだ。これなど議論が長引くのがおかしい。やる気のなさ、政治家という商売第一の姿勢が露骨である。まあ、政治家の労働条件維持なんだから、率直に言えばよろしい。

 参議院議員候補者現職は2016年の当選者である。自民党キャッチ・コピーは安倍氏のイメージポスターに「この道を力強く、前へ。」とあった。昨日本欄に書いた公明党のコピー「日本を、前へ。」は、その6年後版らしい。

 時に自民党公約の柱は、GDP600兆円達成だった。まったく実現には程遠い。これ、コロナ前にも全く見込みがなかった。これが長期政権のお手柄だ。

 岸田氏は、毅然とした外交安全保障と新しい資本主義を打ち出しているが、2つともまったく中身がわからない。前者は、安全ならぬ危険膨張の危惧がある。後者は大風呂敷的ネーミングでこれまた意味不明だ。

 新型コロナ対策指令室など、省庁タテ割りを括ろうとしている程度で、この間の動向を徹底検証する話はこれまたホラにすぎなかった。感染症対策のコンテンツがまるで論じられていない。

 大風呂敷やホラ話で選挙民をその気にさせようとする根性は悪質である。こんなものが堂々と公約でございますと登場するのは、国会議員諸氏の目が節穴で、見るべきものを見ず、考えるべきものを考えず、批判するべきことを批判していないからだと言わねばならない。

 劣勢の野党が、与党のトリクルダウン効果を狙ったり、ガマの油売り商法に走ったりするのは、見苦しい。堂々たる議論ができる野党に育ってほしい。今回参議院議員選挙では、各候補者の真剣・真摯な演説を期待する。徒党よりも偽物でない人材を選択しなければなりませんねえ。