論 考

前に進むためには

 参議院議員選挙日程は6月22日公示・7月10日投開票に決まりだ。中身のない国会は閉幕する。論議の技術ばかりが話題になって、なにを問題として議論するかがまことに弱い。演技で相手を凌駕しても政治問題の核心がヤワでは有益ではない。この人の言論は傾聴に値するという政治家がおられるか。

 「問題を設定するという問題がある」。たとえば、安全保障といえば直ちに軍事力直結論議だが、軍事力で平和を構築できない。こんなこと素直に考えれば誰にでもわかる理屈だ。あえていえば、軍事力偏重の安全保障は、こと志とは正反対に、限りなく紛争ぼっ発へ向かう。

 アメリカ中心に中国包囲網形勢に躍起だが、中国は恐れ入りましたというどころか、ますます殻を固める。アメリカは本国が戦禍に塗れた体験がない。戦争のたびに経済が拡大して、焼け太りをくり返す。露骨にいえば、世界中の武力紛争がアメリカ経済を発展させてきた。

 強者にくっついていれば安全だという理屈はある。ただし、それは親分と一連托生、指示されることには逆らえない。つまり、誇り高き日本(人)としては許容したくないはずだ。

 日本は、アメリカ国ではない。ロシア国でもない。中国でもない。日本らしさとはなんだろうか。公明党の選挙コピーは「日本を、前へ。」だそうだ。どんな日本を構想しているのか。これ、すべての党、いや、すべての国民各位がじっくり考えねばならない。そして、前へ行くには後ろ、来し方をじっくり検証せねばならない。

 公明党だけの問題ではない。わが社会の様子をみるに、前後左右、過去未来がまったく論じられず、目先の恰好をつけることばかりに熱が入っている。「眼光紙背に徹す」の構えで行きたい。