論 考

米国流リーダーシップの陥穽

 バイデン氏が、インド太平洋経済枠組み(IPEF)を引っ提げて外遊する。日米豪印(QUAD)、米英豪(AUKS)、米プラスASEAN9を包括的戦略パートナーシップへ引き上げるなど、まことに中国排除網の構築に忙しい。

 米国内は猛烈なインフレで、FRBのインフレ排除が円滑に進むかどうか大きな疑問である。中間選挙は、バイデン民主党が歴史的敗北をするという予測がすでに固まった。

 外交で巻きなおそうと考えるのも無理はないが、それが奏功するのは、このところ内向き強い米国人の関心を際立って国外に向けさせねばならない。

 ロシア軍の高級将校が10人も狙撃で死亡したとか、旗艦モスクワの撃沈の報道がどうもすっきりしないので奇妙だと思っていたら、実は、米側情報によって成功したのであるが、宣伝すると、ウクライナ戦争にどっぷり深入りすることになるので、それを避けたい当局が情報漏洩を抑えていたらしい。

 ウクライナの戦略は当然ながら米国を引きずり込んで、対ロシア戦に勝利して、ロシアの軛を断つことにある。

 かくして、バイデン氏が、政権を維持するための「誘い水」は、のっぴきならない戦争だという危ない分析ができる。

 中長期的には、世界は「コロナ⇒戦争⇒食料危機」が避けられなくなりつつある。バイデン氏は、トランプ氏のアメリカ第一主義を否定したはずだが、本質はまったく同じだ。

 ウクライナ戦争はプーチンがけしからんけれども、まず、米国の都合を第一にするという考えが、世界分割の瀬戸際にまで引きずり込んだということを、少しは反省してもらいたい。

 このままでは、世界はますます不安定、混乱、混沌へと加速するのみだ。