論 考

経済力低下を示す円安

 よい円安とか、悪い円安という言葉が意味するのは、現状に対して、円安がたまたま好都合か、不都合かを論ずるのであって、これは、議論としては場当たり的なカテゴリーに入る。

 もちろん、円の価値は為替市場における相対的なものだから、固定的にいくらが当然というものではない。

 日本のGDPは1980年に255兆円で、1995年には521兆円、15年間でざっと2倍である。しかし、1995年から四半世紀過ぎたが、GDPはほとんど変わっていない。

 足許では、輸出企業が円安効果で営業利益を伸ばしているが、賃金は定期昇給プラス少々で、四半世紀の賃金は横ばいか下降気味だ。

 元気に活動している企業、先行投資している企業の話題はきわめて少ない。

 円は日本経済の実力を示していると考えれば、この10年、円安目くらましで、日本経済は相当下降したと見るべきだ。

 産業革命は資本が大きく貢献したが、資本があっても、技術革新や企業活動そのものが活発化しなければ果たせなかった。

 日本経済の再建という大きな視点から考えねばならない。