論 考

論外

 55年前の10月、女性3人、男性2人で西穂高へ登った。男性1人はそれなりに登山経験あり、その他は六甲山をうろちょろする程度であった。初めての高峰、高山植物に見とれたりしながら快晴に恵まれて順調に頂上をめざした。

 山の気象変化が急速だということに驚いたのは、あと200mほどの地点であった。怪しい風が吹き、黒雲が現れたと思う間もなく、雷鳴の轟音と鋭い稲妻があって、猛烈な雨に見舞われた。

 急転直下、森に向かって逆戻りした。雷も怖い。幸い、落雷に見舞われずに済んだが、あとで聞けば、頂上付近にドカンと落雷したそうだ。

 気張って前進しなくてよかったと、みんなで語り合った。

 いかに予報が発達しても、山や海で異変に気ついたときは手遅れだ。観光船会社の社長と船長が、「荒れたら戻る」と話して出航したというが、まるでなにもわかっていないことだけはよくわかった。

 しかも、「お騒がせして申し訳ない」という日本語にも驚いた。なにが起こったのか、まるで分っていない。やんぬるかな。