論 考

マクロン氏はさらに期するところあり

 マクロン氏が再選された。シラク大統領再選以来20年ぶりの再選である。メディアは、ルペン氏との得票率が縮まったことを喧伝するが、再選の意味は決して小さくない。

 なぜならルペン氏は、思想右翼を封印して、御用聞き態度に徹した。反権力意識の強い人々が左翼であっても、ルペン氏に投票した。つまり、ルペン氏は、ものの考え方を放棄させるトリックを駆使した。

 一方、マクロン氏に投票した人は、マクロンの権威主義に反発しつつも、極右思想を排した。両者の得票差が縮まったが、マクロン氏の性格的なもののマイナスを考量すれば、前回の選挙と質的にはほとんど同じだろう。

 マクロン氏は「全員の大統領になる」と語った。そんなことは言わなくても、他に大統領がいないのだから、全員の大統領である。また、一方から考えると、あえて全員の大統領になるためには「仕事をしない」ことが求められる。

 しかし、マクロン氏は岸田氏とはまったくタイプが異なる。岸田氏が東アジアで存在感がなくても国民はさして問題にしない。マクロン氏はそうはいかない。欧州、EU、NATOの重鎮として活躍しなければならない。

 「全員の大統領」発言は、選挙戦終了のエールである。右翼は国家主義を掲げて、反「欧州・EU・NATO」である。マクロン氏がこれを認めることはない。正しくは「反右翼の全員の大統領」である。

 新聞は、国内外の分断を指摘する。分断が発生するのは、わが国とは異なって、人々が各自自分の考えを打ち出しているわけだ。いかにして、権威主義的ではない民主主義的リーダーシップを発揮できるか。それが再選大統領の課題である。