論 考

権力=無法

 竹下登首相(在職1987~1989)は民主政治において、政治家が強力なリーダーシップを発揮すべきではないという考え方だった。さしてパッとしない政治家だったが、わたしは、この見識を高く評価する。

 敗戦の年21歳の竹下青年は、青年団活動を通じて頭角を現した。戦前・戦中の日本政治を考え、強力なリーダーシップの危なさを痛感した。

 国家と国民が違和感なく結びつくのが理想だが、国家を押し出せば全体主義・専制政治になるとも考えただろう。

 プーチン氏は、--強力なリーダーシップを発揮すると公言しつつ、実は単なるオペレーターにすぎない多数の政治家--とは際立って異なる。そして、強力な指導者という存在の破壊的危険性を世界に示した。

 内外の問題解決に暴力を駆使するのは、無法者と共通する。言論で勝負するのであれば、傑出した政治家だが、ウクライナ侵攻で、無法者に堕落した。

 権力というものが、人々にとって、いかに危険であるか。わが国の政治について、しっかりした見識を養いたい。