論 考

ドイツ外交の深遠

 ドイツがロシアにたいして弱腰だという論調が多い。

 ドイツは国内で使用する天然ガスの40%程度をロシアから輸入している。経済制裁で、輸入を止めればロシアも困るが、ドイツも困る。だから、弱腰だという論調はわかりやすい。

 もちろんそれは事実だが、ドイツの見識はもっと哲学的であろうと、わたしは考える。ドイツが誇る哲学者カント(1724~1804)の『永遠平和のために』(1795)によれば、人類は農耕の定着から、戦争の時代に入ったが、戦争自体が法的関係に入るように機能するとして、平和を論じた。

 貿易が当然になると、商業精神が発達する。商業精神は本来戦争とは両立できないとも指摘した。これは論理的に説得力をもつ。

 ところがバカな政治家は、貿易に政治的介入をするのみならず、貿易自体を戦争の道具に使う。それとは違って、ドイツの外交理念は、カントが提唱した理念を念頭において、いかに状況に対処するか、苦心しているのではなかろうか。