論 考

軍事力こそが諸悪の根源だ

 ミャンマーで、軍がクーデターを起こして1年、2011年の民政移管からの10年を破壊した。武器をもたない人々が1,500人以上殺害され、各地で武装した人々と軍の戦闘が続いている。ASEANの仲介は、軍が無視しているから目下手詰まりである。報道も核心を突くものは見られない。

 都市部は表面平穏だが、経済も治安も著しく悪化している。そして、人々の民主政治に対する決意は揺るがないと伝えられる。クーデターを起こしたほうも、いわば命がかかっているから、話し合いの舞台を構築するのはきわめて難しい。

 ウクライナ危機は、プーチン氏の野心が広く伝えられている。しかし、誰もその本心を覗けない。米欧の戦略が、対話を主張しつつ、一方ではロシアを挑発している面もかなり見えてきた。いわば、ウクライナが米欧・ロシア双方によって弄ばれている。ゼレンスキー氏が「政治家がパニックを起こしている」というのは、きわめて正しいし、悲痛な叫びである。

 世界中で混乱と無秩序を起こしている背景を考えると、結局は、個人としては非力であるが、軍を動かし得る地位にある人々自身が超人意識にのめり込んでいる。民主主義を唱えても、自分は他者とは違うとのぼせ上っている。 

 現代は、世界に軍縮の機運がまったくない。敵から守るために軍隊の強化が必要だといえば、人々は、お任せ・よろしくの気風になりやすいが、根元を考えれば軍事力自体が、「こと志と異なって」、混乱と無秩序を作り出している。

 軍人が政治をやろうとするのも、政治家が軍事力を背景に外交を展開するのも、本質的に道を踏み外している。政治家たろうとするならば、絶対平和主義思想を頭に叩き込んでおかねばならない。