論 考

人づくりはローテク

 ドイツのザクセン州はドレスデン市を中心に、シリコンサクソニーといわれ、欧州のシリコンバレーをめざしてがんばっている。欧州の半導体製造の1/3は、同地域で製造されている。

 2000年代には、高額投資が嫌われて伸び悩んだ苦い経験があり、今回は政府やEUの支援も期待している。目下は勢いがあるが、悩みは人材確保で、世界40カ国の人財を採用している企業もあるそうだ。

 そこで日本の場合を考える。

 半導体に限らない。企業は人なり。猫の手も借りたいというが、猫でも手でもよろしくない。企業は、手数を揃えればよいのではなく、企業活動の協力者に集まってもらいたい。つまり、だいじなことは頭だ。(ただオツムが良いという意味ではない)頭とは、人間的能力である。

 企業活動を通じて、人が育たなければ企業の発展は期待できない。世の中は、AIだのITだのと賑わって、ハイテク一筋論であるが、大事なことを忘れてはいないだろうか。

 いわく、人づくり(人が育つ)は、決定的にローテクなのである。たとえば、アイデアを捻るためにブレーンストーミングをおこなうが、アイデアを提供するのは人である。コンピューターがアイデアを出すわけではない。

 パワハラのような野蛮な行為が、ハイテク企業の知的な人(?)によっておこなわれること自体が、企業の人に対する心得違いを物語る。