論 考

「しがらみ」の意味がわからない

 どうも、新聞で使われる言葉が不鮮明でいけない。

 「過去のしがらみにとらわれないで」と書く。しがらみは柵であって、水の流れをせき止める。転じてまといつく過去というのだろう。

 ここで要注意は、歴史的思考としては、過去があるから現在がある。歴史上にも突然変異的な事態が発生することはあろうが、過去を無視するのは過ちを冒す危惧が大きい。

 日本は敗戦によって民主主義になった。しがらみにとらわれない人は、民主主義オーライでやってきた。一方、戦後ほとんど政権を担ってきた保守党・自民党は、安倍氏に代表されるように、戦前国家主義への志向性を隠さない。

 すなわち、自民党は過去のしがらみに生きて、主張し、行動している。

 ところが、民主主義、リベラルを掲げる立民に対して、党首選においては、過去のしがらみにとらわれるな、と新聞は主張する。

 民主主義について立民は、過去のしがらみを乗り越えているから上等。逆に自民がしがらみを乗り越えねばならないはずだ。

 あるいは、敗戦後なんて昔のことであって、そこからの諸々の歴史的経緯を無視し、国家主義志向・上意下達タイプの自民的政治姿勢を是とすべしというのであれば、わが国の新聞は、戦前的思想へ先祖返りせよというのだろうか。

 わたしは、言葉を大事にしない自民党政治を批判してきた。新聞がこんな調子では、なにをかいわんや。もっと、性根を入れて記事を書いてもらいたい。