論 考

自民党総裁選の悩み

 自民党総裁選は、まだ候補者が揃わない。派閥が模様眺めで、意思統一できにくいのは、やはり菅氏(安倍・菅9年間)への人々の批判の中身と、今後の対応について自信が持てないからである。

 出馬表明した岸田氏はバランス感と安定感があるが、「よっしゃ」と声がかかるほどの起爆力がない。要するに、自民党としては比較的担ぎやすいが、総選挙の顔として心細い。

 河野氏は、発信力があり(要するに目立つ)、最近の意識調査でもトップを行くが、担ぎにくい事情がいろいろある。

 派閥の麻生氏が河野氏を、「常識がない」と語ったのは、常識のない麻生氏が言うのだから、実は常識があるということになるが、永田町的常識と世間の常識は違う。永田町的常識も一本ではなく、なかなか複雑である。麻生的「常識がない」という表現にも、含味熟慮する価値がなくはない。

 石破派が河野氏で行くという結論を出せば、状況がかなり動くかもしれない。

 目下は、当然ながらコロナ対策への関心が高いが、やがて経済対策が避けられない大問題として浮上する。国と地方の長期債務は21年度末で1,212兆円になる。GDP比177%だ。

 安倍氏は地方遊説で、日銀がおカネを印刷してくれるから、将来のツケなど心配無用であると、超頓珍漢な与太話をして回っている。こんなことで元気づけて選挙に勝つようなことになれば、わが国はお先真っ暗である。

 なんでも先送りして済ませたのが、安倍・菅内閣の9年間である。ツケを払うのが自分ではないから、権力維持だけを目標にやってきた。

 果たして、わが国の重たい責任を担えるリーダーが登場するだろうか!