日々道楽

軍事では片付かない

 アフガニスタンの混乱を見ていると、米国の軍事作戦上の失敗が際立つ。

 1940年に英仏連合軍が、40万人の兵員をダンケルクから撤退させた作戦も、軍事にかかわる人は忘れることのない事例だろう。

 第二次世界大戦では、米軍のロジスティクス戦略が他国の能力をけた外れに上回っていた。米軍の力は、ロジスティクスにありだ。

 古今東西、戦闘から勝利して撤退するにせよ、敗北して撤退するにせよ、自軍の「殿(しんがり)」、最後尾の部隊は追っ手に備えつつ撤退するから、もっとも優秀な部隊を殿備え(しんがりぞなえ)とした。撤退の失敗は全体の失敗に通ずる。

 日本が敗戦して、米国占領軍が日本に駐留した。52年4月28日に対日講和条約が発効した。高級ホテルを接収して高官の居住区に当てていた米軍は、持ち込んだ設備・器具・什器などなど、短期間にすべて撤収して去った。当時のホテルマンが、あまりの手際の良さにポカンとしたエピソードが残る。

 アフガニスタンで、米軍の戦闘のほとんどはゲリラ戦であった。正規軍とゲリラとの戦闘は難しい。米軍も特殊部隊を駆使したはずだが、今回の撤退については奇妙に感じるほど不手際である。

 詳しいことはわからないが、常識的に考えると、撤退が政治的に決められた。なおかつ、首都カブールが陥落するまでに数か月はかかると見ていたというから、いわゆる軍事作戦の撤退としては体制不十分だったのだろう。

 政治家が軍備拡充を大声疾呼するが、軍事力だけでは問題解決できない。軍事力を行使することによって、破壊と殺戮が常態化する。それは問題解決を先延ばししているだけである。

 戦争を開始するのは政治家だが、解決するのも政治家だということを、政治家だけではなく、誰もがつねに頭に入れておかねばならない。