論 考

タリバンは学んだか

 アフガニスタンにおける米国の失敗は、国作りの支援に失敗したことだ。

 1996年タリバンが、横暴で内紛が絶えなかったムジャヒディン(聖戦の戦士)を放逐して、98年にアフガニスタンの90%を支配した当初、人々はタリバンを歓迎した。民政に力を入れて、人々の生活が向上したからである。

 ところが厳格なシャリア(イスラム法)を導入し、苛酷な刑罰や、女子の差別と圧迫、テレビ・音楽・映画などを禁止したので、人々の気持ちが離反した。2001年10月米国ブッシュ政権主導のアフガニスタン空爆が始まって、タリバンは政権を失った。

 2014年10月米英のアフガニスタン戦闘作戦は終了したが、翌3月オバマ大統領がガニ大統領の要請をうけて米駐留軍の撤退を延期した。そこからアフガニスタン支援が開始したわけだが、アフガニスタンの国作りが進まなかった。単純にいえば、武力行使をしてタリバン権力を破壊したが、それに代わった権力が人々の生活向上につながる活動を十分にできなかった。

 アフガニスタンは19世紀から国内が落ち着いたことはなく、つねに内紛状態であり、権力奪取をするのは武力が手っ取り早いという思想が続いていた。

 タリバンを放逐したあと、米国の支援は対テロ作戦に強い関心を持っているから治安維持に重点を置いた支援を展開したのであるが、民政が安定しなければ治安が乱れるのは当たり前である。また、支援したはずの治安部隊も育たなかった。

 アフガニスタンの周辺国は、自国の思惑で支援する。タリバンを育てたのはパキスタンであり、サウジアラビアである。

 昨日、タリバン報道担当者は、「誰にも報復しない、強固なイスラム政権を築く」と発言した。内政第一で、破壊した国民生活の再建の兆しが出るかどうか、タリバンが人々の支持を得られるようになるか。目下は、その動向を注視するしかない。

 またまたはっきりしたことは、いかに優秀な軍備を持とうとも、国作りの役には立たないことだ。パシュトー語で学生というタリバンのメンバーが、この20年間で何を勉強したか。ぜひとも、人々の気持ちを国作りに向けられる政策と行動を打ち出してもらいたい。