論 考

タリバンが政権奪還

 8月15日、アフガニスタンで、タリバンが首都カブールへ入った。ガニ大統領は隣国タジキスタンへ脱出した。2日前にガニ氏が、ウズベキスタンとタジキスタンとの境界のマザリシャリフへ入って政府軍を激励したばかりである。政府軍の士気は劣化しているといわれていた。

 観測では、タリバンがカブールに入るには1~2か月と見られていたが、一挙の結末である。すでに正確な情報を得にくくなっていたのがわかる。

 アメリカ、ドイツ、カナダなど大使館を閉鎖して外交官は帰国作業を急いでいる。タリバンは平和裏の権力移行を政府に呼びかけていた。権力はすでにタリバンに移行した。

 CNNが、「なぜこんなに酷いことになったのか」質問したのに対して、ブリンケン国務長官は、「そもそも米軍がアフガニスタンに入ったのは、9.11の報復が目的であり、ビンラディンを裁いて、アルカイダを撤退させた(のだから目的は達した)。国造りはアフガニスタン人の仕事だ」と応じた。

 アメリカはアフガン対策に、この20年間で200兆円使った。こんなことをいつまでもやっていられるかというわけだ。しかし、いままでアメリカが徹底的に介入していたのも事実であるから、ご都合主義のそしりは免れない。武力紛争を開始するのは簡単だが、大団円には持ち込めないという見本でもある。

 戦火に倒れ、避難して苦しむアフガニスタンの市民を思えば、まことに酷い話だ。バイデン政権には、「はい、お終い」でなく、きちんと総括してもらいたいものだ。期待はできないが——