論 考

身代り死の神父の遺志

 長崎市長・田上氏の「長崎平和宣言」スピーチにあった、マキシミリアノ・マリア・コルベ神父(1894~1941)は、ポーランド生まれのカトリック司祭で、聖人の1人である。

 少年時代は数学の才能に優れ、周辺は数学者としての期待をかけたらしいが、信仰心の深いコルベは自分の願い通り聖職者としての人生を歩んだ。

 1930年に長崎へ来て布教活動に励んだ後、36年に帰国した。41年、ゲシュタポにナチ批判を理由に逮捕され、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所へ送られた。

 そこで、囚われ人の脱走計画が発覚し、10人が無作為に餓死の刑罰に選ばれた。コルベ神父は、命乞いした1人に成り代わって自ら刑罰を受けた。地下室に閉じ込められた人々は、神父とともに祈り続け、2週間後毒殺された。

 不勉強でコルベ神父のことを初めて知った。政治(戦争)との関係を別にした、人道主義の立場からの核兵器廃絶を訴える主張として、非常に象徴的で有意義なスピーチであると思うので、一言記述しておく。