論 考

単なるミスではありましょうが

 広島・長崎の原爆記念日での首相挨拶は、やはり、ご本人にすれば内心忸怩たるものがあると、わたしは推察する。

 いわば二重基準であり、加えて、核を持つ国と持たぬ国の橋渡しをするというのが建前に過ぎず、実際は、核保有国の立場のほうを強く押し出しているからである。

 昨日、広島の慰霊式典で、菅氏は原稿の一部を読み飛ばした。もちろん意図的ではなく単なるミスであろう。しかし、皮肉なもので、極めて核心部分を読み飛ばした。おかげで、もっとも忸怩たる核心がことさら強調された。

 いわく、――我が国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、「核兵器のない世界」の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要――云々。

 なんとなく、見えざる力が働いているようでもある。