論 考

不祥事の始末に必要なこと

 三菱電機が不祥事から立ち直るために、社内向け社長の「全体で品質風土改革にとりくむための経営トップからのメッセージ」を発し、全社員対象アンケートや、パソコンのデータ分析などをおこなうらしい。

 今回発覚した30年以上前からのデータ偽証などは、歴年、事実を知っていた社員が相当な人数に上ると思われる。

 その間、たまたま事実を知って、仲間・上司に、「これはよくない」と意見を言った人もいたのではないだろうか。あるいは、知ったけれども、直ちに見ざる・聞かざる・言わざるを決め込んだかもしれない。

 前者の場合は、他者からのなんらかの抑圧的作用があってそのままになったのだろうし、後者の場合は、自分自身で抑え込んだことになる。

 まとめて言えば、コミュニケーション不全である。組織だからコミュニケーションが不可欠なのではない。そもそも人が集団をつくった経過を考えれば、コミュニケーションが成立したから集団が組織されたのである。

 そのように考えれば、コミュニケーションなき組織を維持していたのは、上意下達だけで組織が維持されていたといわねばならない。

 組織は即断即決、素早く動かねばならないという実務的理屈は当然だが、上意下達だけで動いている人々は自分の意思をなくしている。会社が雇用するのは手足だけではなく、経営に参加してもらうためである。

 もちろん全職場が不祥事をやっているわけではないが、人々の意見が縦横に飛び交う組織文化をめざさねばならない。30年かけて信用を落とした。「出直し」を叫ぶだけではだめだ。日本一コミュケーションのよい会社だという信用を確立するために、30年かけるというつもりで取り組んでもらいたい。