論 考

国=政府、あいつ・こいつらの悪事

 いわゆる「赤木ファイル」を、財務省がようやく提出した。あるものを隠したり、ないものを捏造したりすることは、まちがいなく犯罪的行為である。

 毎日新聞社説は、「赤木さんは公務員として誇りと良心をもって仕事をしていたのだろう。それを踏みにじる国の異様さが浮き彫りになった」として、全容解明を主張した。当然の社説である——

 国の異様さというのは、たしかにそうなのだが、この場合の国は政府であろう。政府というシステムが、悪さをしたのではない。政府なるシステムの、あるポジションに就いているあいつ、さらには、こいつらが賛同(あるいは従属)して、悪さをしたのである。犯罪に使われた自動車が主人公ではないのと同じで、国の異様さとは、あいつ、こいつらのなした悪事である。

 有能な技術者として、みんなからおおいに尊敬された大先輩は、「システムという言葉を軽々に使うな」とよく言われた。システムは所詮システムである。全ては人のおこないである。

 不祥事を起こした連中が、会社のためにやったなどと語るのも大間違いである。会社が悪事をなせと言うわけがない。会社の場合は、比較的社会的制裁を受けやすいが、「国」なるシステムはそうはいかない。毎日社説子の気持ちは理解するけれども、「国の異様さ」と書いてしまうと、あいつ、こいつらが消えてしまうことを忘れてほしくない。