論 考

海外投資家の視線

 ここまで来ると、東京五輪を開催するよりも中止したほうが株価にとってはプラスである。これは、海外投資家の見方としてロイターが報じた。

 開催しても追加の経済メリットがない。コロナ感染をどのくらい抑えられるかがカギだ。コロナ対策は、すでに政府の失敗が明らかだが、世論の反対を無視して開催すれば、必ず政局不安定化を招く。海外投資家は、それを懸念している。

 ワクチン接種の進み具合だけが、菅氏の期待であるが、7月末に高齢者3,600万人に2回接種完了するのは苦しい。目下はワクチンを1回接種した人は6%未満である。突貫工事的に進めるようなことをやれば、混乱に拍車がかかる。まあ、着実に進めていくのが上策である。

 菅氏の期待は、9月7日解散、21日公示、10月3日投開票にあるらしい。9月20日の自民党総裁選以後という日程になると、党内基盤が脆弱な上に、再度総裁に選ばれるかどうか危ぶむというわけだ。

 解散を政権維持の手段として駆使するという悪しき体質が染みついている。国会で国民的合意を確立するという、本来当たり前のことが無視されているから、実は、つねに政局は不安定である。

 政局不安定であるが、政治課題に対する健全な緊張感がまったくない。そのために、次々打ち出す政策が展望を欠いたモグラ叩きにも似て、全体としての国力を落とし続けている。

 政治家が権力を弄んでいると、五輪問題だけではなく、海外投資家の日本離れが加速する可能性が高い。本気で仕事をしてもらわないと、日本社会は活力を失ってしまう。