論 考

検証作業が歴史を生かす

 歴史というものは、単に過去の記録ではない。わたしは、クローチェ(1862~1952)の「すべての真の歴史は現代の歴史である」という言葉が大切だと思う。つまり、現代の生の関心と一致結合されている限りにおいて、現在の関心に応えるという意義である。

 「記憶を風化させるな」といっても、記憶は年を経れば劣化する。そこで体験や記憶を語り継ぐというのであるが、体験した人はやがていなくなるし、その人たちと時代を共有した人も同様だ。

 体験しなくても、時代が変遷しても、かつて歴史的にあった事実を、現在の関心と合致させるならば、いかに年月を経ていようとも、現在の人々にとっての生きた歴史となる。

 そこで歴史的課題のポイントは、ある不都合な事実が発生したのは、防げなかったのかどうか。次は、発生した後、どのように対応してきて、どのように現在につながっているのか。1931年満州事変からの15年戦争も、2011年3月11日の東日本大震災も、この視点で考えることが、記憶を風化させないことになる。

 まして東日本大震災は、まだ終わっていない。震災後の取り組みを検証する作業が必要だ。本日の新聞各紙は、恒例の追悼特集が多いが、ぜひ、検証的企画をやってもらいたい。国会・政府レベルで率先して取り組んでもらいたい。