論 考

お粗末なミステリー

 どうやら、菅首相の長男という名前の人物が鍵を握っている接待で、総務省の職員11人が国家公務員倫理規定違反で減給処分となった。接待をうけた側が倫理規定違反であれば、接待した側も然るべき処置を受けねばならない。このままでは、総務省職員の一人芝居みたいで、できの悪いミステリーものだ。

 「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」なる会が、2020年8月25日から署名活動をして、同11月4日の提出期限日に集めたのは435,000筆の署名だった。リコールに必要な866,000筆に及ばないのでリコール活動は失敗。

 ところが集めた署名の83.2%に相当する362,000筆が同一人物によって書かれたものであったり偽造があったりで、愛知県警が刑事事件として捜査に乗り出した。

 佐賀新聞によると、時給950円で、佐賀県の青年会館でアルバイトによる署名作業が10日程度にわたっておこなわれた。時期は10月ごろ。

 署名が集まらないので恰好悪い、なんとかせねばというのがおそらく動機であろう。ところが、リコールの会の高須会長も、賑やかに支援した河村名古屋市長も、田中事務局長もインチキにはタッチせずという。ならば、他の誰がインチキを指示するだろうか。ミステリアスだが尻尾が見える。

 ヒラリー・クリントン女史が犯罪小説作家と組んで、『State of Terror』なる政治を使ったスリラー小説を発表する。以前、ビル・クリントン氏も、作家と組んで『大統領失踪』というスリラー小説を発表している。なるほど、米国政治のおっかなさについては、トランプの4年間、十分に証明済みだ。

 でき映えや、スケールの違いはあるが、日米ともに政治というものは、ミステリーやスリラーにふさわしいらしい。しかし、わがほうは、いかにも陳腐にして不細工で、とても小説などにはできそうもない。