論 考

島根県知事発言に賛成

 島根県知事の丸山達也知事が、県内の聖火リレー中止を検討すると表明した。感染拡大を助長するイベントの開催は理解しがたいという、至極当たり前の見解表明である。わたしが生まれて18歳まで育った島根県は保守的で、沈黙は金の典型的気風だと思っていたが、今回の知事発言は全面的に賛成。

 菅氏は、コロナウイルスに打ち勝った証として五輪開催を唱えるが、そもそもわが国におけるコロナウイルス対策、感染症対策は、昨年から何もそれらしいものがない。やったことは自粛キャンペーンと、他国で開発されたワクチンを購入しただけだ。

 いわば、蛸壺に閉じこもって嵐が過ぎ去るのをじっと待つという、いかにも日本的な行動をやってきただけであるのに、コロナウイルスに打ち勝つなどとコピーを打ち出すのは分不相応である。

 しかも、大批判を食らったGoToキャンペーンもそうだが、感染拡大阻止? いや蛸壺戦略であるのに、それを真っ向否定するような作戦を打ち出す。丸山知事は、島根県民だけでなく、「これでいいのか!」という、国民視線に立ったものである。

 安倍内閣もそうだったが、政府与党の政治は、経済がうまくいけば国民を何とでもなだめられるという戦略である。東証一部株価が3万円になった。景気がよろしいのは株高だという短絡的経済論で、それが実体経済を反映したものではなく、すなわち、極めて不安定で、いわゆるカジノ経済だということに対する警戒心すらない。

 丸山知事発言は、もっと、ものごとを本質的にきちんと考えようではないかという警鐘だと受け止めたい。