論 考

メディアのミスリード

 メディアが、菅氏を叩き上げの実務家として持ち上げたのは4か月前だ。実務家というのは実務に熟達している、つまりは仕事師という意味であろう。

 朝日新聞の調査で、内閣支持率が33%、不支持が45%と出た。

 首相ポストは、本人がなんらかの専門に通じていることよりも、大局観をもっており、「いま・ここで、何をなすべきか」の判断ができなければならず、その点、メディアが作った菅人気が中身のないものであったことが証明された。

 菅氏は就任に際して、コロナウイルス拡大防止を掲げたが、そもそも官房長官時代から、それらしい手立てを打ち出していない。心配していたことが現実化したわけだ。

 菅氏には再選戦略など余計なことを考えている暇はない。朝日調査で、五輪の延期と中止の意見は86%に達している。もちろん、どんな形にせよ、五輪を開催することは可能だ。しかし、目下の事情から多数のアスリートや観客を動員して実施できるものではない。

 常識的判断ができなければ、人気回復どころか自滅の道を辿るだけだろう。