論 考

政治は本来崇高である

 去ることがリスク軽減である人と、リスク増大を懸念される人がいる。前者は派手さだけが取り柄だったトランプ氏、後者は地味だが世界のデモクラシーの方向を示し続けているメルケル氏である。メルケル氏はこの秋に降板する。

 皮肉の極みである。76年前には、アメリカがデモクラシーの最大の牽引車として脚光を浴び、ドイツは完膚なきまでに批判されたナチ党が消滅した。もちろん、東洋では日本がナチ党同様に悪玉であった。

 世界は無常、万物は流転して固定しない。しかし、人類が到達した世界平和の理念自体を固定する人は少ないだろう。時々刻々変化する状況において、各国の舵取りをする政治家の仕事は本来崇高なものである。

 政治家がみじめな自身の栄達の虜になるとき、その国の政治は乱調に拍車がかかる。トランプ氏とメルケル氏の根本的な違いは、虜になるか、崇高なものを追い求めるか、まるで絵に描いたような方向性の違いである。

 トランプ的4年間の終焉を歓迎する。そして、メルケル氏が灯し続けた明かりを意識的に求める人々が増えるように努力したい。