論 考

日韓歴史の重み

 昨日、ソウル中央地裁が、元従軍慰安婦12人が原告の損害賠償請求訴訟について、――従軍慰安婦事件は、日本によって計画的・組織的に強行された反人道的犯罪であるから、「主権免除」は適用されない。賠償請求権は1965年の日韓請求権協定、2015年合意のいずれにも含まれない――と判決した。

 同民事訴訟は、2013年に原告が民事調停を要請したが、日本政府が応じなかったので起こされた訴訟である。

 これに対して日本政府は、「主権免除」を認めぬ不当判決だと突き放している。

 「主権免除」(Sovereign immunity)は、国家免除(state immunity)ともいわれ、主権国家およびその機関が、その行為あるいは財産をめぐる争訟について、外国の裁判所の管轄に服することを免除される。

 ただし、国家の行為については、①主権的行為と、②私法的・商業的な業務管理的行為との2つがあり、①は免除されるが、②は免除の対象にならないという、制限免除主義が世界の流れであるという。つまり、「主権免除」を押し出した門前払いは十分な説得力をもたない。

 また、日本は2015年の日韓慰安婦問題合意を盾にとっているが、韓国内では、これについて納得が得られていない。それは韓国政府の責任だと突っぱねるのは理屈であるが、慰安婦問題は日本が韓国を植民地として好き放題やったことに直結した問題である。

 韓国では依然として、植民地時代が過去のものではない。韓国政府の対応を主張するだけではなく、日本政府も歴史の重みというものに、もっと本気で対峙するべきである。韓国の人々がそれを認めるまで、この問題は片付かない。