論 考

民主主義の後退・危機と、わたしたち

 内外に民主主義の後退とか危機についてのオピニオンが目立つ。同感だ。

 民主主義の理論は、人間が自由なものとして生まれたことからHuman Rights=基本的人権を根本に打ち立てる。

 しかし、自由なものとして生れたのは事実だが、人間がつくった社会において、それを直接的に認めて社会の礎にするかどうかは、その社会の人々が合意しなければならない。

 つまりHuman Rightsとは、1つの思想である。民主主義の後退とか危機といわれるものは、民主主義国において、この思想を認めない勢力が無視できなくなったことを意味する。

 後退にせよ、危機にせよ、それぞれの国の民主主義の歴史が異なるから、そのような事態を生み出した事情は異なる。

 民主主義先進国では、人々の闘いを通して形成してきた。わが国は、敗戦後に民主主義が「降ってきた」みたいなもので、いわば制度先行、人々の意識がそれを追っかけるという関係だ。

 敗戦において、外部からの力によって、それまでの全体主義が否定されたのだが、すべての人々が自分の意志でそうしたのではないところに、日本的民主主義のひ弱さがある。 

 つまり、民主主義思想を、人々が自家薬籠中の物になし得るか否かが問われている。そのための社会的運動を形成しなくてはならない。