論 考

五輪に神風が吹くか

 AFP記者の「(五輪の)中止を考えざるを得ない状況にはどんなことがあるか?」という質問に対して、都知事の小池氏は「それはありません」と回答した。「それはありえません」という回答はありえませんと言うべきだ。

 NHKの世論調査では、開催27%、中止32%、延期31%である。回答者全員が、もともと五輪開催賛成だと前提すれば、現在のコロナ騒動からして、中止派と延期派合わせて6割強が開催は無理だと判断している。開催派も、なにがなんでも開催だというのではなく、開催願望が強いと見るべきだろう。

 五輪は、アスリート第一というけれども、スポーツの祭典だから、選手をはじめとする狭い意味の五輪関係者だけではなく、全体的盛り上がりが不可欠である。つまり、無理して開催しても盛り上がりを欠けば、成功ではない。

 小池氏は、6割強の懐疑派は現在を見ているが、自分は未来を見ていると語った。それはそうだろう。ここまでやってきてという悔しさが滲んでもいる。その点、同情を禁じえないのではあるが、「中止を考えざるを得ない状況」を一切排除して取り組むというのであれば、無謀である。

 中止(延期)という選択肢がゼロであるという思考に固まってしまうと、理性的判断が不可能になる。なんとなれば、小池氏が見ている未来とは、所詮「願望」に過ぎないからである。神風頼みはよろしくない。