論 考

嘘に対する寛容は危険だ

 米国大統領選挙で選挙人投票が終わり、バイデン氏の勝利が確定した。バイデン氏はすでに着々と政府の陣容を固めている。4年前に、トランプ氏が政府中枢のメンバー決定すら円滑に進められなかったのとは正反対だ。

 15日には、共和党重鎮であるミッチ・マッコネル上院議員(院内総務)が、バイデン氏の勝利を認めて、祝意を送った。

 しかし、トランプ氏と共和党支持者には、大統領選挙が盗まれた、不正投票があったということを本気で信じている人が圧倒している。外から見ていると信じられない事態が続いている。

 大統領であるトランプ氏が得意の「嘘」をまき散らした。もちろん、「嘘」だとわかっている共和党支持者も少なくないだろう。また、大統領が「嘘」をつくわけがないという信頼感があるのだろう。

 純粋に! 欺かれている人に対して事実をどうやってお知らせするか。これも難しいが、「嘘」と知りつつ、トランプ敗退を認めたくないから選挙が盗まれたと公言してはばからない人は確信犯である。それを言い続けて、米国政治の正統性を否定し続けるならば、米国は内紛の一歩手前の混乱を続ける危惧がある。トランプ氏はSNSを悪用したのだが、事態がここまで来ると、まさに「もう1つの世界」が現出した。

 ところで、わが国も隣の火事と見ていられない。なにしろ政治家の嘘に寛容な国民性であることは、どなた様もご存知の通りである。思想信条の違いには寛容であっても、嘘がはびこるような政治にしないように、お互い性根をしっかり持ちたい。