論 考

党派対立

 バイデン氏が大統領になれば、大きく見て、オバマ政権で示された方向へ、たとえば「核なき世界」への戦略や、気候変動対策をはじめとする国際協調路線へ復帰するだろうという期待が大きい。そして、それらはすでにバイデン氏が発信してきたことでもある。

 それらが実現するかどうかは、バイデン氏が掲げた「(米国民が)1つにまとまり傷を癒す」「結束させる大統領(になる)」ことが、実現することでもある。

 大統領は、もちろん国民に直接呼びかけることができる。それに国民の多数が共感・共鳴すれば、トランプ氏が分断した米国が立ち直る。

 ただし、トランプ氏が好き放題できたのは、上院多数派の共和党がそれを許容したからである。なぜ許容したかというと、自分たちにとって好都合だと判断していたからである。

 大統領選挙だけについてみれば、分断国家の愚は否定された。しかし、上院下院ともに、共和党は大きく後退せず、むしろバイデン氏を擁する民主党の伸び悩みが示された。共和党議員が分断国家の愚を痛感しただろうか。

 もし、そうではなく、共和党的利益の追求に走ると党派対立が燃え上がる。トランプ氏が24年の大統領選挙出馬へ望みを託す戦略を本気で考えているとすれば、これからの4年間は、長かった大統領選挙がさらに長く継続する。

 国民は、その程度に応じた政治しか手にできない。トランプ的政治を忌避したコミュニティが、単に人間の好き嫌いだけに留まらず、民主主義のあり方を真剣かつ執拗に追求する「うねり」を維持できるか。

 日本で生活するわたしたちの生きた教科書が、ここにある。