論 考

大阪市民のリアリズム

 維新の大阪都構想の本質は大阪市廃止である。府と市で「ふしあわせ」を掲げて、大阪府を東京都になぞらえ、大阪市を分割して区にする構想であった。

 11月1日の住民投票では僅差で反対派が制した。5年前の住民投票でも否決された。松井市長や吉村知事が記者会見で断念の弁を述べたので、構想発表以来10年間の論争が終わる。

 維新は選挙に強い上に、今回は、前回反対側だった公明党を味方につけたから、おそらく敗北は予期していなかっただろう。それは反対側も同じであった。地域政党を原点として、登場した維新だから、この敗北感とダメージは大きい。

 市民サービスの観点からすれば、自治体の組織形態が変わることイクオール市民サービス向上ではない。「ふしあわせ」は、なかなかパンチ力のあるコピーだが、常識ある市民からすれば、「ふしあわせ」問題を対立的に掲げるだけでなく、なぜ、府と市が具体的問題を論議して止揚しなかったのかという疑問があっただろう。それに、市民サービスの活動をするのは職員である。働く職員の頭ごなしに突っ走った感じも強い。

 わたしは、ひさしぶりに大阪市民のリアリズムを見た思いだ。