論 考

八つ当たり社会

 今日の読売新聞は「悪質クレーム 度を越した言動は慎みたい」という社説を掲げた。2017年にUAゼンセンが社会に対して問題提起をしたが、容易になくならない。

 品物を届けに来た配達員にスプレーを吹き付けたとか、100円ショップで店員を刺し殺すと恫喝して脅迫で有罪になったなどの事例があるという。もちろん、これらは極端なものであるが、世の中の雰囲気が殺伐としていることが伺える。

 いじめにせよ、パワハラにせよ、悪質クレームにせよ、この種の問題はいずれも共通して自分より立場の弱い人に向けられている。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずという言葉もある。わたしの子ども時代には、弱いものを虐めてはいけないと、大方の親が口にした。

 これらが社会問題化するのは、やはり、世間的気風を閉塞感が覆っているのであろう。やり切れない思いや、怒りを抑えられず八つ当たりする。八つ当たりしても当人の問題解決にはならないから、一度ではすまず、八つ当たりが延々と続きやすい。心を許せる人がいないのでもある。

 これらは法律を作って犯罪として罰することは可能であるが、人の内面が震源地だから、法律では本来の問題解決ができない。それこそ、「おたがいさま」が定着する社会にするしかない。

 で、八つ当たりみたいであるが、権力者が、わしの言うことに従えというような態度を取り続ける限り、社会的閉塞感は増大するのであって、方々にはくれぐれも自分を律する心がけを育ててほしい。