論 考

バント戦法内閣

 菅氏の所信表明演説からすると、政策の方向性は、個別的政策を打ち出して堅実に実行するという構えだ。

 その理由は、第一に、1年以内に衆議院議員選挙をやらねばならないという動かしがたい日程がある。第二は、得意とする! 行政面での改革で成果を上げたい。人事に強いという神話? ができつつある。

 省庁・自治体の縦割りを打破するというのは、たとえば不妊治療に健康保険を適用する法案であり、行政への押印原則廃止である。これらは、わかりやすく人々が理解しやすい。小さいことでも手柄は手柄だと胸を張れる。

 理念や思想が問われるような問題は積極的に語りたくない。語らなくても日本学術会議問題などは野党の追及が厳しいから、以前からの常套手段で時間稼ぎをやる。もちろん総選挙までは数の力でしのげるという目論見だ。

 積極外交という言葉を入れたが、これは看板に過ぎない。直面する核兵器禁止条約への対応は全然思案外らしい。これも理念・思想が絡む。

 理念・思想が絡む問題は、大きい論議を避けて、1つひとつ自民党流で押し進む。日本国憲法に従えば、核兵器禁止条約を批准し、締約国会議にも参加するというのが自然の流れであるから、これをやらないだけでも、改憲! を進めることになる。

 要は、永田町の与党的玄人筋が評価する路線である。一方、国民受けしそうなことを着々進めることによって、人気を獲得するという作戦だ。

 かくして、日本国の進路をどうするかというような見識は見当たらない。政治家としてのスケールは小さい。これが日本国民にとって上等かどうかは、国民1人ひとりが考えるしかない。次の総選挙が勝負所である。