論 考

掻い掘り

 東京では、1967年から水質が悪くて絶滅したと見られていたジュンサイ(蓴菜)が、このほど八王子市の長池公園の池で復活した。

 ジュンサイはスイレン科の多年生水草である。泥中に根が残っていたのが、掻い掘り(かいぼり)によって見つかり、新たに発芽した。掻い掘りとは、池や沼の水を汲み出して干すのである。

 ちょっと嬉しい教訓を得た。歴史を考えると、世の中が麻の如く乱れた時代は少なくない。もし、そのままであれば、ついに人間社会は壊滅しただろう。しかし、乱世もあれば、未来へ向かって再建する時代もあった。ジュンサイの復活は、大事な何かが絶滅せずじっと時期を待って耐えていたみたいだ。

 ジュンサイは食品として好む人が少なくないが、ぬるぬる・ぬめぬめしているので、「ジュンサイな奴」といえば、何を考えているのかわからない、信用できない輩だという意味に使われる。(もっとも、最近はこんな使い方を知っている人は少ない)

 世の中は複雑怪奇、気分のよいことよりも面白くないことのほうが多いが、大事な価値を確保している人は少なくない。社会的「掻い掘り」が進めば、世の中は好転するにちがいない。

 こんなことを考えていたら、アメリカ大統領選で、永年の共和党支持者が、トランプ氏の独裁者ぶりや白人至上主義・差別について、人間性として許容範囲を超えるとして、バイデン氏支持へ転向しているという。とくに、女性の意思表示が目立っているそうだ。