論 考

遅々として進まずではあるが——

 15日予定の米国大統領候補トランプ氏とバイデン氏の公開討論が開かれなかったので、それぞれ独自の対話集会を開催した。

 トランプ氏の集会はNBCで放映された。質問してもまともに答えないトランプ氏に対して、頭にきた司会者のガスリー氏が、あなたは大統領であって「危ない親戚のおじさん」ではないと批判した。

 わがほうの議会や記者会見を見ていても、まともに答えないのが定着している。これでは政治と人々の距離が近づかない。政治家諸氏は、それに気づかないのだろうか? いや、わかった上でやっていると思う。

 政治は、お上であって、庶民如きが対等にあーだこーだと口を挟んでほしくない。政治というものは、政治家が「国民のために」行ってあげるのだから、おとなしく様子を見ていればよろしい、という認識なのである。

 この体質は、実に明治以来の官僚政治の伝統であって、とても民主主義といえる代物ではない。「よらしむべし、知らしむべからず」の気風がいつまでもなくならない。政治家にパブリック・サーバントの認識がない。一方、庶民側には、政治を「してもらう」という認識が相変わらず強い。

 民主主義が根づくのは時間がかかるとはいえ、せめて、その精神を弁えた政治家を選びたいものだ。