論 考

タイの民主化運動

 2001年にタクシン政権が発足して以来、タイでは農村や貧困層が政治に対する発言を著しく強めてきた。対して、軍がクーデターを起こし、04年には軍人のプラユットが政権を奪取した。

 人々の抗議が続いて、19年に民政移管したものの、プラユットが引き続き政権を掌握して、反政府勢力を強権で弾圧している。民主を要求する政党は解散させられた。

 目下、タマサート大学の学生たちを中心に、プラユット退陣と王室改革を求める大衆行動が始められた。いままで、王室は政治的緩衝の役割を果たしていたが、プミポン前国王からワチラローコン国王に代わって、王室も批判の対象になった。王室批判に対しては不敬罪があり、最高15年間の禁錮である。不敬罪廃止も大衆行動の要求だ。

 日本に亡命中の京都大学准教授パビン・チャチャバルポンプン氏が、フェイスブックに「王室のあり方」というページを開設すると登録が100万人になった。タイ政府はフェイスブックに対して国内法を理由として、同ページの国内からの遮断を要求した。フェイスブックは強制されて遮断したが、法的措置に訴えるとしている。パビン准教授は、直ちに異なるページを開設して対抗している。

 タイの人々は、王室を敬愛するし、信心深く温厚であるが、芯は強靭である。弾圧されて直ぐに屈するような軟弱ではない。大衆行動は、権力者や都市部エリートの支配に対する抗議である。民主化のうねりが大きくなりそうだ。